斎藤美奈子■ 誤読日記
消えゆく私小説の伝統はタレント本に継承されていた。
以前、拙著(『読者は踊る』)の中で書いた一文である。この見解にいまも変更はない。
タレント本というジャンルは「有名人や芸能人が自らの知られざる日常や半生を綴った(語った)本」として、すでに定着しているのではないかと思う。
芸能ニュースのネタにはなっても、読書人には軽くあしらわれるタレント本。だが、見方を変えれば、そこには積極的な価値も見いだせる。旧来の伝記に代わる本、としての効用である。
いわゆる偉人伝は、戦後日本の読書界、とりわけ小中学生の読書界の花形だった。「本当にいた人の話」には、みんな興味をもつのである。
しかし、時代は移り、野口英世やナイチンゲールに自らを重ね合わせるのは、さすがにむずかしくなってきた。そこでタレント本の登場となる。
■ 誤読日記|斎藤美奈子|朝日新聞社|2005年07月|ISBN:4022500328
★★★
《キャッチ・コピー》
ワイドショー気分で読みまくり全175冊!!ミーハー書評の決定版。
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