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後藤正治■ 不屈者

20060717gotouhukutu

究極、棋士が残せるものは棋譜だけだと谷川はいう。この点でいえば、後世、語りつがれるほどの棋譜を谷川は残している。一九九六年十月、羽生竜王に挑戦した第二局における「7七桂」である。この一手で決まった将棋を、米長邦雄は「本局は谷川、生涯の名作であった」と記している。〔略〕

谷川の全棋譜にあたったことがある井上慶太は、7七桂を「谷川さんしか指せない、もっとも谷川的な、プロから見ても鳥肌の立つ手です。棋士冥利につきるというか、十年、二十年に一度生まれる手といいますか、歴史に残る一手です」と語った。〔略〕

『谷川vs羽生100番勝負』には、谷川・羽生それぞれが選んだベスト十局が収録されている。この一局は当然、谷川にとってベストワンにもなろう一局であろうが、谷川は選んでいない。奇異に思って訊いてみた。

「ええ、これは私にとっては会心譜ですが、羽生さんにとってはそうではないので……。選んだのは、双方にとっていい将棋という視点から選んでみました」

谷川らしい答えが返ってきた。あくまで気配りをする優しき人から、「恐るべき烈手」は放たれたのである

「美の成熟―谷川浩司」

■ 不屈者後藤正治|新潮社|200512月|ISBN410300651X

★★★

《キャッチ・コピー》

彼らは「人間力」で土壇場を凌いだ。プロ野球を追放された投手、全てのタイトルを失った棋士、生死の境を彷徨った登山家……絶望からの復帰を描く傑作ルポ!

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