« 出久根達郎■ あらいざらい本の話 | トップページ | 久田恵■ 大丈夫。 »

小林信彦■ 東京少年

20060712kobayashitokyo

空腹の自習時間に、ぼくたちの班は手巻き蓄音機のふたをあけて、敵機爆音集のレコードをかけた。

それは、捕獲した敵機(爆撃機・艦載機)の爆音をさまざまな高度において録音したもので、「カーチスP40・高度3千メートル」といった解説が入っていた。

この解説の部分を飛ばし、爆音だけをきかせて、機種を当てさせるのが、ぼくたちのゲームである。

勉強はできないが、こういうことには強い者がいて、

「ええと、ロッキードだ」

とか、

「ボーイングBl7でしょう」

と、ずばりと当てた。

その時、奥の襖があき、飛び出してきた教師が、得意顔の少年を突き飛ばした。ぼくは呆然と立ち尽す。

「おまえの副級長の資格を剥奪する。ただの班長だ」

教師はぼくを指さして言った。レョードをとり上げ、廊下に出て、沓脱石に叩きつけた。

「ボーイングBl7の音なんて、当てても無駄だ。もう、ボーイングB29しか、われわれには関係がないんだ!」

■ 東京少年小林信彦|新潮社|200510月|ISBN4103318260

★★★

《キャッチ・コピー》

昭和197月、11歳の少年に突然突きつけられた「疎開」という名のもう1つの戦争。敗戦前後に多感な少年期を過ごした著者が、戦後60年の「現在」だからこそ書かなければならなかった自伝的作品。

memo

「一人の少年が戦争末期、敗戦の激動期に、何を考えて生きたかが、作品のテーマ(あとがき)」

|

« 出久根達郎■ あらいざらい本の話 | トップページ | 久田恵■ 大丈夫。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 小林信彦■ 東京少年:

« 出久根達郎■ あらいざらい本の話 | トップページ | 久田恵■ 大丈夫。 »