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小林信彦■ うらなり

20060913uranarikobayashi

ぼくが研究書『漱石作品論集成第二巻』(桜楓社)をとりよせたのは、その中の有光隆司氏の「『坊つちやん』の構造――悲劇の方法について」という短い論文を読むためであった。〔略〕

ごく大ざっぱにまとめれば、有光氏は、『坊っちゃん』という作品の語り手である男は、しばしばいわれるように〈挫折〉も〈敗北〉もしていないと言う。男の役割は、教頭、古賀、堀田、遠山令嬢(マドンナ)の間の緊迫した状態を、読者の前に提示するだけである。〔略〕

そして、有光氏は次のように結論づける。

『坊つちやん』という作品は、その深部において悲劇として読まれることを望んでいるのである。……あるいは『坊つちやん』とは、喜劇を演じる男の向こう側に、悲劇役者たちの世界が透けてみえる、そのような仕掛けを内包した作品なのだ、といってもよかろう。〉

この奥深い小論文が書かれたのは一九八二年であり、七〇年代から八〇年代にかけての『坊っちゃん』評価の一頂点といえるかも知れない。

――「創作ノート

■ うらなり|小林信彦|文藝春秋|200606月|ISBN/4163249508

★★★

《キャッチ・コピー》

『坊っちゃん』から100年、“うらなり”が見た人生の真実。

明治、大正、昭和を生きたひとりの知識人の肖像を卓抜な着想と滋味あふれる文章で描き出した著者渾身の小さな大傑作。

memo

小説「うらなり」とエッセイ「創作ノート」を収録。やっぱり小林信彦は小説よりもエッセイの方が格段に面白い。

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