林義雄■ やまとことばワンポイントレッスン
俳句に用いられる夏の季語に、漢字で「南風」と書いて[ハエ]と読まれる、風の方位名があります。(……)
この[ハエ]の[エ]は、歴史的仮名遣いに従うとしたら、どの仮名で表すことになるのでしょうか。候補としては、「はえ」「はへ」「はゑ」の三とおりの表記が考えられます。
しかし実は、どれを選ぶのがよいのかを厳密に決めることはできません。なぜならば、このことばが文献に姿をあらわすのは、十七世紀初頭のことですが、そのころはすでに語中語尾の「え」「へ」「ゑ」の音韻上の区別は失われているので、この語の歴史的仮名遣いの証例を得ることはできないからです。(……)
後の時代になってから新しく生まれた日本語に、歴史的仮名遣いの基準をあてはめようというのは、そもそも無理な話なのです。(……)
しかし、現代日本語では使用することのない「けり」や「かな」を切字として用い、あるいは「いづる」や「たゆたふ」のような古いやまとことばを俳句表現用語として使いたいのであれば、その表記には歴史的仮名遣いを選ぶ必要があります。
■ やまとことばワンポイントレッスン|林義雄|リヨン社/二見書房|2005年06月|ISBN:4576050907
★★★
《キャッチ・コピー》
近現代の俳句・江戸時代の俳諧にあらわれた「やまとことば」をもとに、日本語の変化や、ことばのきまり、仮名遣いをやさしく解説。
俳句や連句愛好家の、文語・歴史的仮名遣いアレルギーも緩和されること請け合い!
| 固定リンク





コメント