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絲山秋子 ■ イッツ・オンリー・トーク

20060515itoyama1

本間は散歩の嫌いな犬みたいに後ろからついてきた。星を見上げながら、ああ、またやってしまうのだなと思った。

本間が酔いつぶれて前後不覚になって眠ってしまえばいいのに、そうしたらセックスしなくて済むのに、と思った。どうして自分が本間に限ってそんなように思うのか判らなかった。

私は誰とでもしてしまうのだ、好き嫌いはあまり関係ない、淋しいとかじゃない、迷わない、お互いの距離を計りあって苦しいコミュニケーションをするより寝てしまった方が自然だし楽なのだ。

お酒を飲んで頃合いで「する?」と一言聞けば断る男なんて滅多なことじゃいない。だがしてしまえばそれっきりで、そうやって私の周りからは男友だちが一人ずつ姿を消していくのだった。

それはパンをトーストするのと同じくらい単純なことで、理由も名前もない、のっぺらぼうのトーストは食べてしまえば実にあっけらかんと何も残らないのだ。

『イッツ・オンリー・トーク』絲山秋子|文藝春秋|200605月|文庫|ISBN4167714019

★★★

《キャッチ・コピー》

EDの議員、鬱病のヤクザ、痴漢、いとこの居候遠い点と点とが形づくる星座のような関係。ひと夏の出会いと別れを、キング・クリムゾンに乗せて「ムダ話さ」と歌いとばすデビュー作。

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